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自然の原理を最大限に活用した、Airbus APWorks社の3Dプリント電動バイク“Light Rider”

別名“3D プリント” とも呼ばれる積層造形法は、従来の製造手法に代わる新しい製造手法として産業界に普及しつつあります。その理由は、何と言っても大幅な軽量化を達成できることにあります。積層造形法を利用すれば、剛性や高いパフォーマンスを維持しながら、コンポーネントの軽量化を達成することができるのです。この積層造形法をいち早く採用したのは航空宇宙産業でしたが、今や自動車産業などのセクターにも普及しており、積層造形が活躍する場は増加の一途を辿っています。

電動車両のフレーム構造は、積層造形法のメリットを得られる製造部品の一つです。燃費向上を目的とした軽量化を達成するために、複雑なフレーム形状の採用が可能となります。

その積層造形法を用いた革新的な製品の代表格こそ、Airbus APWorks 社が開発した世界初の3D プリント電動バイク“Light Rider”です。「複雑に枝分かれした穴空き構造は、溶接やフライス加工といった従来の手法では製造は不可能でした」と、Airbus Group の完全子会社Airbus APWorks 社のCEO であるJoachim Zettler 氏は語ります。

新しい設計は、トポロジー最適化とAirbus 社が独自開発した新素材なくしては誕生しませんでした。

APWorks Light Rider―設計スタディの成果が結実

Light Rider は、金属3D プリントに秘められた大きな可能性を既存顧客や潜在顧客にアピールするための設計スタディとして開発されました。APWorks 社は、リエンジニアリング、材料最適化、3D プリントを3つの柱として、まったく新しい材料や製品開発を目標に掲げています。これら3つの技術を組み合わせれば、軽量化やコスト削減、製造リードタイム短縮の達成だけでなく、部品やコンポーネントに新たな機能を追加することも可能になります。今回開発した電動バイクのフレーム設計は、自然の原理を活用したトポロジー最適化から生まれました。Light Rider の見た目からは、1960 年代にイギリスで発祥したバイクのスタイル“カフェレーサー” が、レースマシンとして生まれ変わったかのような印象を覚えます。APWorks 社のエンジニアはヘッドライトやシートなどのコンポーネントとカラーを決めてから、設計プロセスに取り掛かりました。

成功を導いた要因には、トポロジー最適化に加えて、Airbus 社が開発した高性能アルミニウム合金Scalmalloy® があります。Scalmalloy®は、耐腐食性だけでなく、アルミニウムの軽さとチタン並みの強さをあわせ持つ新素材です。

「Light Rider のように線条細工風の構造にすれば軽量化は達成できますが、そのためにはScalmalloy® のような高強度かつ軽量な素材が欠かせません」とZettler 氏は述べています。

“「操作性が良く、解析精度が高いAltair HyperWorks を用いた開発は快適でした。軽量設計プロセスの随所でAltair のソフトウェアツールを使用しました」”

– Patrick Schürmann | Project Engineer for Optimization and Design, APWorks –

HyperWorksを用いたシミュレーション主導設計

APWorks 社は2013 年からAltair HyperWorks を開発の標準パッケージとして使用していますが、今回のフレーム設計プロジェクトでもHyperWorksのさまざまなシミュレーションツールを活用しました。

APWorks 社の最適化・設計担当プロジェクトエンジニアであり、数か月前からLight Rider の技術開発サポートのプロジェクトエンジニアも兼任しているPatrick Schürmann 氏は、次のように説明します。「当社の開発プロセスでは、普段からHyperMesh でモデリングし、OptiStruct で有限要素解析とトポロジー最適化を実行し、HyperViewでポストプロセスをしています。Light Rider のバイクフレームの設計修正とスタイリング作業では、今回は他社製のCAD システムを使用しましたが、将来的にはこうした開発作業も、solidThinking のコンセプト設計ツールであるEvolve を使って行うことで、シミュレーション主導設計プロセスの全体をAltair 製品ファミリーでカバーしたいと考えています」

最適化によって3D プリントの要件を満たす

Light Rider のようなプロジェクトでは、3D プリント可能な最適形状を設計するために、3つの難題をクリアしなければなりません。
  1. 様々な制約条件の下で最適形状案を生成する: これはトポロジー最適化が得意とする作業です。
  2. 最適形状案を基に詳細形状データを作成する: 従来のCAD ツールではなくEvolve やAltair Inspire などのダイレクトモデリングツールを使えば、より迅速により高品質の形状を作成できます。
  3. 積層造形特有の製造制約条件を考慮して形状を修正する: これは最適化の範囲外の作業です。

最適化の準備

Light Rider のフレームなどのように、総合的な最適化が必要なコンポーネントの場合は、様々な荷重条件や機能上の制約条件を考慮して設計パラメータを定義しなければなりません。たとえばバイクの総合的な乗りやすさを左右する、ホイールベースの長さ、ハンドルバー、フットレスト、シートの幾何学的な位置などです。そしてバイクフレームの外形寸法に合わせた大きな設計空間を設定します。こうした情報を最適化ソフトウェアに入力することで、荷重条件やコンポーネントの結合条件を考慮したモデルが生成されます。

最適化ソフトウェアによって、最適な荷重経路が特定され、どこにどのくらいの材料を使用すべきかを詳細に示した結果が導き出されます。この最適化時に考慮すべきバイクの荷重ケースは、データシート(タイヤの垂直抗力、摩擦など)から生成されます。バイクの場合は、ハンドルバーやフットレストといった複数の箇所で引張荷重や押し荷重が発生し、それが結果的にフレームへと伝わります。

さらに設計時には、バイクの最終的な組立工程も考慮する必要がありました。そこで、穴あけが必要な箇所やマウント位置などの境界条件を考慮しました。3D プリントしたものに細かな加工を加えることなくそのまま組み立てられるよう、エンジニアたちは計画段階で、ボルト締結作業性を考慮しました。

OptiStruct とInspire を用いたトポロジー最適化

トポロジー最適化は、シミュレーションや設計作業で大いに活躍します。トポロジー最適化では、最大設計空間を定義し、荷重などの境界条件を設定してから、最適化目標を定義します。

About APWorks

AIRBUS完全所有子会社であるAIRBUS APWORKS GmbHは、実証済みの航空学の概念を広範な産業に活用しています。金属3Dプリンティング(積層造形)に焦点をあて、コンポーネントの最適な設計から適切な材料の選択とプロトタイプの製造、連続生産の検証に至るまで、構造およびスペア部品の価値ある生産チェーン全体を網羅しています。ロボティクス、機械工学、自動車、医療機器および航空宇宙分野の顧客に、機能の高度な統合と最適化を実現した部品を軽量かつ短納期で供給するという付加価値を提供しています。また、以前によりもはるかに複雑な形状も実現可能になりました。2013年以降、AIRBUS APWORKS社は、ミュンヘン近郊のオットブルンにあるルドウィグ ベルコウ キャンパスを拠点としています。